第15回 指示代名詞ではなく固有名詞で話しましょう (2012年6月)
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子どもに何かを頼む時や何かをやらせようとしている時、ちゃんと言ったのに、ぜんぜん伝わらなくてイライラした……なんてことありませんか?
その時に自分が子どもに言った言葉を思い出してみてください。もしかして、「あれ取って」とか「それ、あっちに持って行って」などの指示代名詞を使っていませんでしたか?
ママの言う「あれ」「それ」「あっち」などの代名詞はママの中では、ちゃんと「トンカツソース」、「絵本」、「本棚」など、明確に固有名詞としてイメージされています。その上、指さしなどのジェスチャーまでつけていたら、子どもも分かってくれるに違いないと思いますよね。
でも例えば、トンカツを食べようとしている時に「あれ取って」と言い、「あれ」がソースだと通じるのは大人だからです。トンカツにはソースをかけるものだと経験的に知っているから伝わるんです。
でも、子どもの場合、ママの指さした先にソースの他、醤油やドレッシングも置いてあったりしたら、「あれ」がどれをさしているのか分かりません。
絵本を本棚にしまうというのは子どもでも分かるかも知れませんが、今、ママが片付けて欲しいと思っているとは気づかないかも知れません。
「え?どれのこと?」と戸惑っている間に、ママが怒り出すと、子どもは焦ってしまい、ますます混乱します。
なので、もし言いたいことが伝わっていないと感じたら、「そのトンカツソース、取って」、「その絵本を本棚に片付けてね」など、子どもにも分かる言葉で話してみてください。
ほんの少し言葉を替えるだけで、子どももママの言いたいことがよく分かるし、ママも子どもが思ったとおりの行動を取ってくれるので、気持ちが穏やかになりますよ。
実践してみよう!
わかってもらうために、言葉を選ぶ。
部屋に散らかったおもちゃを子どもに片付けさせようと思った時には、「○○を片付けてね」というように、しっかりモノの名前を伝えることが大切です。
つい「あれ」「それ」になってしまいがちですが、意識して言ってみるようにしてみましょう。
NGパターン 「それ、片付けなさい」の場合
ママはおもちゃを片付けさせようとしたのだけど、子どもは間違えて「本」を片付けようとしてしまう。
ママ「違うでしょ!」
ママはイライラし、子どももママに叱られて、しょんぼり。
OKパターン 「クマのぬいぐるみ、片付けなさい」の場合
言われたものをちゃんと片付けることができる。
ママ「よくできたね」
子どももママも子どももにっこり。
夫婦で応用 「子どもの世話を頼むときは、具体的な言葉で」
パパは大人だから、指示代名詞でも大丈夫かというと、意外と通じないものです。
子どもに接する時間が少ないパパだからこそ、子どもの世話もママほど手馴れてはいません。
わかりやすい言葉で頼んでみると、ママの望む動きをしてくれる確率がUPしますよ。
オススメ本
「子どもは「抱きしめて」育てなさい」
(濤川栄太 著、中経の文庫)
抱き締めること(ホールディング)の大切さ、何才からでも遅くないことがよく分かります。
すさんだ心、閉じた心をもホールディングは解きほぐすのだということが、著者の体験を交えて、わかりやすく書かれています。
(テニテオ 2012年6月号より)
テニテオ編集部の許可を得て掲載しています。無断での転載は、固くお断りします。
本田から一言
人は意外な程に、「あれ」、「それ」、「こっち」などの指示代名詞を使って会話をしています。「おい、あれくれ」でお茶が出てくるような、昭和初期の老夫婦のようなあうんの呼吸というと素敵な響きに聞こえますが、子ども相手ではまったく通じません。
とはいえ、私もやっぱり指示代名詞を使ってしまうことがあります。通じてないな、と思ったら、まずは私の言い方が悪かったかも知れないと思い、言葉を変えて、通じるまで何度も言い直すようにしています。分かってくれない子どもが悪い、ではなく、伝えきれない自分が悪い、そう思える親でありたいと思っています。